スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
「ジャケット、落としてしまったから」
かろうじて見つけた理由を伝えてみたけれど、識嶋さんは「いい」と小さく言葉を落とすと、細いけれどがっちりとした体を私に乗せて。
「今は、こうしてたいんだ」
顔を首筋にうずめながら囁いた。
酒気を帯びた熱い吐息が私の首をくすぐって思わず身じろぐ。
すると識嶋さんは私を背後から抱き締めながら横になった。
かかっていた重さからは介抱されたけれど、腹部に回された腕に緊張して思わず呼吸を止めてしまう。
言葉も出ないままに体を強張らせていれば、再び静かな彼の声。
「俺は、お前を知りたい……」
その甘い言葉に、熱い声に。
「心を……お前という人間を、もっと」
欲しがる想いに、自分の中に芽生え始めていた感情が一気に膨れ上がっていく。
大輪の花が咲くように、鮮やかに。
「許して……くれるか?」
彼の少し渇いた唇が、首の後ろに遠慮がちに触れてくる。
肩の曲線をなぞるようにゆっくりと移動する感覚に、どう離れるかなんて考える余裕さえ奪われた。