スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-

Floor 19



西園寺 優花。

彼女は証券会社の会長の娘で、親戚も官僚や社長といった職業の多い立派な家柄らしい。

自分の都合を優先してすまなかったと、識嶋さんは家に入るなり謝ってくれた。

正直、気にしないでくださいなんて気を使える心境ではなく、私はただ首を横に振るだけで答えて。

これからどうすればいいのかと、ぽつりとリビングに声を零した。

それに対して識嶋さんは「フォローを入れておくから、お前は今まで通り友人として接してみてくれ」と頼んできた。

今まで通りだなんて、そんな身勝手ではいられない。

とにかく、話し合わなければならないと思うも、識嶋さんとの約束に響かないようにしなければならない難しにスマホを握ったまま悩んでしまう。

本当の事情を説明できればどんなに楽だろう。

どうして、嘘をつかなければならない相手が友人だったのか。

そればかりが頭を巡って。

結局その晩、私ができたのは『今度ゆっくり話がしたいです』というメッセージを送ることだけだった。

そして──


識嶋ディレクターは婚約者がいるのに高梨と付き合っている。


その噂が制作局内で囁かれ始めたのは、優花ちゃんと鉢合わせしたあの日から一週間も経っていない頃だ。



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