スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


「元々その予定でしたよね」


微笑みを浮かべて答えながらも、心に抱えるのは別の想い。

引き留めてほしい、だなんて。

さっきの決意が識嶋さんを前にしているとこんなにも簡単に揺らいでしまう。

いつもの空気感を意識したはずなのに、気付けばまた生まれている危うい雰囲気。

目が会えば、どちらからともなく視線を逸らして、ケーキを食べたりワインで喉を潤したり。

幾度かそれを繰り返したところで、識嶋さんが小さな音と共にフォークをお皿に置けば。


「行くなと……言ったらどうする。側にいてほしいと、もしも俺がそう言ったら」


真っ直ぐに、私を見つめて。

どうする、と問いかけてきた。


ずるい。

さっきまでの態度から一変させて、強く真剣な眼差しを向けるなんて。

でも、だからこそ冗談じゃないのがわかって、今すぐ彼の腕の中に飛び込んでしまいたいくらい嬉しい。

けれど、そうしてはならないから。



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