スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


「います。友人ですもん。困っているなら」


遠慮なく頼ってください。

続くはずの言葉は、識嶋さんの強い声に遮られる。


「そうじゃない」


そうじゃないんだよ、と掠れるような声を零して。

彼は切なそうに眉根を寄せた。

そして──


「ごちそうさま」


困ったような笑みを残して席を立つと、彼はまだ明かりの灯っていない自室へと消えた。

ひとり見送った私は、密やかに唇を動かす。


「    」


音にせず、告げた想いは識嶋さんには届かない。

届くことは、ない。
















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