溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「な、なんで……その彼女のこと、年下好きだと思うんですか?」
さらっと自然に、踏み込みすぎない程度の無関心さを装って質問してみると、同期の彼はグラスを置いてふてくされたように頬杖をついた。
「なんか後輩の男といちゃついてるし。俺といるときより明らかに笑顔が多いし」
ぶつぶつ呟く彼は、本当に敏腕営業マンなのかと思うくらい子供じみていて、あっけにとられる。私はとなりを振り返った。三年後輩の王子様も、先輩の姿に驚いたように口を開けている。
まさか、瀬戸生吹が、野村くんに嫉妬……?
あまりに思いがけなくて、私の話じゃないのかも、と思った。瀬戸くんの言う『彼女』に自分を当てはめてしまったのかもしれない。なんて自意識過剰だ、私。
「瀬戸さんかわいいいぃぃ!」
芽衣ちゃんがいっそう激しく彼に抱きつく。その反動でふたりはソファに倒れこんだ。
「もうそんな彼女やめて、私にしましょう!」
芽衣ちゃんが覆いかぶさって、そのままキスでもしそうな勢いだ。
「ちょ、ちょっと。芽衣ちゃん酔い過ぎ」
いくらなんでも大学生の飲み会じゃないんだから。立ち上がろうとしたら、瀬戸くんが身を起こした。芽衣ちゃんも一緒にもとのポジションに戻る。
「市原。ありがたいけど、ごめん」
「え……」
瀬戸くんが腕に絡んだ彼女の手をそっと外す。
「全然信用してもらえなくてつらいけど、でも、彼女じゃないとダメなんだ」
「せ、瀬戸さん……」
うるっと目を光らせて、泣き出すのかと思いきや芽衣ちゃんはめいっぱい顔を上下に動かした。