溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
二ヶ月前のあの日。八年付き合った彼と別れることになった、終わりの日。
私は何も知らないまま、いつもと同じ幸せな気持ちで彼に身体を委ねていた。求められるまま、疑うことを知らずに身体を重ねていた。
あのときすでに、彼の心は私に向いていなかったのに。彼は私のことなんて、ずっと見ていなかったのに。
「付き合ってるなんて、形ばっかりで、心がつながってなきゃ、何の意味もないじゃない……」
涙で声が掠れた。かすかに血の味がする。喉が破けたみたいに痛い。
うつむいていると、ふわりと髪に手が置かれた。瀬戸くんが親指で私の涙をぬぐい、額を合わせる。
「ごめん」
ぎゅっと抱きしめられた。
溶けるように伝わるぬくもりは、とても優しい。
瀬戸くんの心臓の音が聞こえる。どくどくと、時計の針みたいに規則正しい音を聞いているうちに、高ぶった感情が少しずつ収まっていった。
目をつぶって、彼の体温に身をゆだねる。喉の痛みが静かに引いていく。