溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「もうそろそろ、大人しくしようか?」
私の上に馬乗りになると、瀬戸生吹は弟のスウェットを脱いだ。剥き出しの体から石鹸のにおいがして、否応なしに心拍数が上がる。
裾から入りこんだ手が、直に肌をなぞる。そろりとくすぐるような動きに、背中が震えた。
「や、め」
全身から力が抜けて、しゃべることもままならない。瀬戸くんの熱い吐息が、私を内側から溶かしていく。
ダメ、流される――
そのとき、
「光希……」
耳元でささやかれた声に、古傷が開いた。
厳重に鎖をかけてしまいこんだはずの記憶がフラッシュバックし、瀬戸くんに浮かされていた体が瞬時に凍りつく。
「やめて!」
気が付くと、彼を突き飛ばしていた。
「……光希?」
「嫌なの! 私は!」
大粒の涙が頬をすべり落ちていく。
頭痛がした。いやなことを思い出したせいで、自分が一瞬で真っ黒に染まった気がする。
瀬戸生吹が今どんな顔をしているのか、見ることもできない。人の心なんて思いやる余裕もないくらい、私は真っ黒だった。