溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~


俺のとなりに立って、一緒に母親に挑んでくれる存在になってくれないだろうか、と。
 
瀬戸生吹はそう言って、私の手を取った。

「今の会社に入って本当によかった。正直、母親から就活についても口を出されてて、ディアラへの入社は猛反対されてたんだ。どうせならもっといいところにしろってさ。けど、親のコネで就職するなんて、俺は絶対に嫌だったから」
 
瀬戸生吹は高校生の頃からひとり暮らしを夢見ていたらしい。自分をがんじがらめにしようとする母親から逃れたくて、就職したら家を出るつもりだった。自分の力で生活をしたかった。
 
でも瀬戸くんの母親は、息子が自由に空へ羽ばたこうとするのを黙って見ている人ではなかった。
 
政財界にコネを持つ彼女はあらゆる手を使って瀬戸くんの邪魔をした。彼が入社試験を受けた数十社、彼はそのほとんどで最終面接まで進んだのに、母の圧力のせいでことごとく不採用に終わった。

「ディアラは部長が大学のOBってこともあって、実を言うと口を利いてくれたんだよ。それで晴れて内定をもらったけど、その代わり、ひとり暮らしはあきらめることになった」
 
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