とある夏の日のことだった
恋の苦味

恋なんてもうまっぴらだと思っていた。
本気で人を好きになれば、傷つくのは俺。
からかわれるのも遊ばれるのも、もううんざりだと思っていたんだ。
なのになぜ、またよりによって叶わぬ君と恋に落ちたりしたのだろう。
だから自分がバカに思えてくる。
だけどこの恋をしたことは、なんとなく消えない気がする。
いや、消したくないと思う。
こんなにも苦しんだのに、それが明らかに今までとは違う苦しみだからだ。
甘い蜜のような幸せばかりではなかったけれど、今度のこの胸の痛みは君を本気で好きでいたからこその証みたいに思うから。
君が望んだ指輪も、最後の最後で俺は自分の気持ちに誓いを立てられずに渡せなかったけど、君がこれが最後の恋だわと笑ったように、俺にとって一番の恋だと思っている。
もしも生まれ変わりなんてものがあれば、次こそは叶えて一生添い遂げてみせようと、抱きしめた腕に力を込めたんだ。
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