蛇の囁き



 私は割れるように痛む頭を抱え込んだ。

 加賀智さんが何かを叫んでいるようだが、何を言っているのか聞こえなかった。

 いつも穏やかな人なのに叫ぶこともあるんだな、と変なことを思った。

 しかし、直ぐにそんなことを考える余裕は無くなった。ただ、頭の中でひたすらに反響して暴れ回っている女の声しか聞くことができない。

 酷い声だ。それは金属を思い切りぶつけ合ったような騒音だった。

 その声は、反響するたびに割れ、増え、そして三人の女の声になった。



 “去れ、穢れし人の子よ”

 “蛇神よ、何故じゃ”

 “お遊びも大概になされよ”



 私は痛みに叫んだが、それが音となって口から漏れ出たかどうかは定かではない。



< 22 / 49 >

この作品をシェア

pagetop