蛇の囁き
白蛇様。
欲にまみれて囁いた息が雪のような指に掛かった背徳感は堪らないものだった。
山神たちが言ったように、自分は紛れもなく穢れし人の子だ。
「もう、名前では呼んでくれないのかな、夏芽」
少し寂しげな顔をするその神の名前を、私はそっと大切に呼んだ。
すると、顔に触れていた彼の手が私の首に触れて、名を呼んだ口を塞がれた。
はっと彼を見つめた。目を閉じた端整な男の白い顔には、同じく白い薄鱗が生えていた。
そして、硬い白鱗に覆われた温度のない唇は、明らかに人間のものではなかった。
こわごわとした私の緊張を解きほぐすように優しく何度も何度も重ねられ、それは次第に深くなっていった。