蛇の囁き
「ところで君の名前は? 」
「泉夏芽です」
「泉? 泉って言ったらあのタケさんの家の子かな」
「はい、祖父です」
「なるほど、孫か」
ふむ、と彼は顎に手をやった。
飄々とした雰囲気を醸す人だと思った。浴衣でも着て縁日を楽しんでいるような印象だ。
年齢は察しにくいがこの落ち着き様はとうに成人しているだろう。二十代、もしかすると三十代かもしれない。
私は身体に篭った熱を気持ち悪く思いながら立ち上がった。寝ていたせいで身体は汗だくになっていたため、私は祖父母の家に戻ることしにした。
暑い中ずっと外に出ていては倒れてしまいそうだ。
彼に帰ることを告げると、「タケさんの家まで送って行っていこう」と言われた。
私はまさかの申し出に戸惑いながらも頷いた。