君に溺れた
真凛と待ち合わせたレストランに行くと真凛の姿はなくて、替わりに両親がいた。

一番会いたくない母親は訪問着を着ている。

親父もスーツを着ている。

嫌な予感がした。

でもどうして真凛が?

俺を見つけて浮かれた母親が手を振っている。

向かいの席には20代前半の女性ときっと両親だろう。

そこで俺は真凛のここ数日の態度がおかしかったことに気づいた。

俺は母親とは目も合わせずに親父に言い放った。

「僕の結婚相手はもう決めてる。余計なことはしないでほしい。」

母親は何か叫んでいたが、俺は振り返らなかった。

すぐに車でマンションに戻る。

でも、そこに真凛は居なかった。

携帯と手紙が残されていた。

『大地さん、お世話になりました。大地さんと過ごした1ヶ月を私は忘れません。あなたの将来に私という存在がいてはいけないと思います。どうか幸せになって下さい。』

幸せになってくれ?

どうやって幸せになればいいんだ?

やっと見つけたのに。

俺が触れたいと思う相手を。

お前じゃなきゃだめなのに、どうやって幸せになるんだ?

お前がいなきゃ上手く息をすることも出来ないのに。

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