キャラメルと月のクラゲ
これは私の私自身への裏切りかもしれない。
水族館にお出かけはするけど彼は友達。
「そうなの? 梨世」
頭の片隅にいる真っ黒な髪をした高校生の私が問いかける。
だって彼は私の好みじゃない。
「そうなの? 梨世」
肩までの黒髪を三つ編みにした中学生の私が問いかける。
だって彼は私を好きにならない。
「そうなの? 梨世」
ケガレを知らない小学生の私が見ている。
だって私の好きなヒトは今だって―――

***

君が話してくれるのが嬉しくて、君の声が心地よくて、僕はついつい言葉を見失う。
彼女といると全ての思考が停止して、その僕を見つめる瞳や形のいい鼻。
キレイにそろえられたマユ毛とアーモンド型のよさを最大限に引き出すようにかたどられたアイメイク、口紅で控えめな赤に彩られた唇《くちびる》。
それらを僕は見つめ続けてしまう。
こんな気持ちを何と言うんだろうか。
僕はそれを降り始めた雨の匂いに思う。

***

「きっとそれは私の勘違い」
「たぶんこれは僕の間違い」
「もしこの気持ちがそうなら、自分が自分でなくなってしまう気がする」
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