キャラメルと月のクラゲ
僕らは歩く。
一人なら遠い道のりも、二人ならそんなに遠くは感じない。
気のせいじゃない?
僕が言うと彼女は笑って言った。
みんなから少し離れて並んで帰る。
それにまだ二人きりじゃないよ。
見られないようにそっと手をつなぐ。
その瞬間、僕は手の先にいる彼女しか見えていなかった。
その彼女の先にある何かを知らなかった。
まだ、世界は僕を取り残して回っている。

***

ほんとうのことを言っていい?
いいよ。
と隣に立つ彼が私の目を見つめる。
初めて会った瞬間から運命のヒトだと思ってた。
こういうこと言うの、恥ずかしいね。
その時にほんとうに思ったかは重要じゃない。
運命とか奇跡とか、ただの後付けでキレイ事。
汚れた私には似合わない。
だから、私は希望を持たない。
期待をしない。
私はただ、目の前にある幸せをつかんでいる。

***

「僕の手の中にある温もりが、消えてしまわないように」
「私の見つめる瞳が、光を失わないように」
「夜空の星にそっと祈りを捧げる」
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