キャラメルと月のクラゲ
クラゲには、感情があるのだろうか。
ヒトの心が脳にあるのなら、脳のないクラゲは何を思い、水の中をたゆたうのだろう。
神経細胞だけの体に心は宿っているのだろうか。
刺激を受けて反撃することも本能的なただの反射だとするなら、そこには心や感情は存在しないだろう。
けれど、僕らは人間だ。
心も感情も存在する。
どこにあるのかもわからない、そんな不確かなモノに僕らは悩む。

***

私達は悩む。
だからこそ、相手の顔色をうかがって、言葉や態度に一喜一憂する。
そしてまた、誰にも言えない秘密を私は抱える。
家族のような存在にすら話すことができない。
だってそれはそのヒトを裏切ることだから。
そんなことを繰り返すのが止められない。
止め方を知らないから。
だから自分自身が嫌になって、消えてなくなりたいと思った。

***

「僕は———」
「私は———」
「いつからヒトに期待しなくなったのだろう」
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