あなたのそばにいたいから
「退職日と契約社員としての手続き関係は人事部長に任せる。
ただ、本来なら有給の調整をしたいところだろうが、
アメリカとは時差があるから、
通常の時間とは違う時間帯で仕事をしてもらうこともあり得る。
そういう意味では難しいかもしれない。
ただ、その変わりといってはなんだけど、
君がアメリカに行く際の行きの渡航費は会社で負担しよう。」

「わかりました。私にとって、仕事も彼も両方がうまくいく形を
考えてくださっただけでもありがたい話だと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。」

「あと、この件に関する作業については、
専用のノートパソコンを用意するので、それを使うように。
しばらくは広報部でも内密にしておくように。
課長に同席してもらったのは、そのためだ。
『小林さんは英語が得意だから、他部署の翻訳の仕事をしばらくしてもらうことになっている』
という形で説明し、他の社員に今回の件の情報を漏らさないよう注意してもらいたい。」

「はい。」

「三枝くんには、進退を含めて相談に乗ってもらっているようだが、
辞めることについてもしばらくは黙っているように。
現在、君が担当している仕事の引き継ぎをどうするかなど
広報部長と課長の方針が決まってからだ。」

「はい。わかりました。」

「あと2か月で友行くんのところに行けると彼にも連絡しないでくれよ。
君も広報で仕事をしてきたからわかるよね。」

「はい。」

「君の作業用のパソコンを用意したら、また連絡する。
連絡があるまでは、課長の指示で仕事をしてくれ。」

「はい。わかりました。いろいろとありがとうございます。」

ひととおりの説明を聞き、私は社長室をあとにした。
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