あなたのそばにいたいから
自分の方向性が決まると、
沈んでいた気持ちが軽くなって、前向きになった。
いろいろ配慮してくれた社長をはじめ、
一緒に働いているみなさんに少しでも役に立てるよう、
仕事を一生懸命にやろうという気持ちになったし、
アメリカへ行く準備も始めなければという思いにかられた。

アメリカに行くとなれば、ビザの準備もしなければならない。
契約のあるフリーランスとはいえ、
私の場合は就労ビザというよりは短期商用ビザの方がふさわしいらしい。
短期商用の場合は滞在が6か月以内となっている。
トモと同じタイミングで帰国とはならないが、
二人が日本に戻ってからの生活の準備を考えたら、
やはりこのビザを準備するのがいいらしい。
あれ、私のパスポートってどうだったっけ。
申請時に確か6か月以上ないといけなかったはず…。
パスポートも更新しておかないと…。
いろいろ考えればきりがない。


翌日、部署内の朝礼で課長はみんなに、

「小林さんは、他部署から急な翻訳の仕事を頼まれ、
ときどき席を外すことがある。
なにかあれば、彼女が持っている広報部用のスマホに連絡をするように。」

と話してくれた。

その話を聞いて、三枝先輩はつかさず、

「ユウちゃん、それで社長に呼ばれたのね。」

「はい。英文の仕事だとトモとのつながりが持てているような気がして、
気持ちはだいぶ楽になりました。」

「まぁ。元気になったし、
ユウちゃんと一緒にお仕事が続けられることになってよかったわ。」

そう言葉を返された。ちょっと後ろめたい気分になった。
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