あなたのそばにいたいから
「だってそうでしょ。
友行くんの商品のプロモーションに関わっているときは
物理的に離れていても大丈夫だったんでしょ。
彼がユウちゃんを不安にさせないようにしていることもわかっているんでしょ。
たぶん、ユウちゃんは形はどうであれ、
彼に尽くしたい気持ちが強いんじゃない?」

先輩の言葉は新鮮だった。
トモとの出会いと関わりにはずっと仕事が一緒だった。
自分がどうしたらいいのかはわからないけど、
ちょっとだけ、モヤモヤしたものは晴れた気がした。

「ユウちゃん、辞めるのはいつだってできるわ。
もうちょっとよく考えてみて。
あなたの本当の気持ちはなんなのか。」

「ありがとうございます。」

「じゃ、仕事に戻ろっか。」

「はい。」

休憩コーナーから仕事に戻ろうと思ったとき、背後から社長の声がした。

「ユウちゃん。」

「あっ、社長。もしかして、私たちの話を聞いていましたか。
お見苦しいところを、申し訳ございません。」

社長に見られてしまい、ドキッとして丁重に謝った。

「あぁ、聞くつもりはなかったけどね。
まぁ、友行くんのこともユウちゃんのこともずっと見てきたからね。
私もこのまま君を辞めさせるのは本意ではない。
あと2か月我慢してくれないか。」

「はい。でもトモが帰ってくるのはあと2か月ではなくずっと先ですよね。」

「あぁ。この話はまた今度。
とりあえず、三枝くんのいうとおり辞めるのはいつでもできるんだから、
気持ちを切り替えて、働いてくれ。」

「はい。気にかけてくださってありがとうございます。」

そう、答えて、休憩コーナーを後にした。


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