偽りのヒーロー
束の間の静寂が、二人を包み込んでいた。夜の公園の、ギィギィとブランコの軋む音だけが響いている。
菜子と菖蒲の二人しかいない公園は、静かな空気が流れていく。
「……あのさっ! 菖蒲のね、その、誤解を解きたいな、と思ってですね……」
努めて明るく、菜子は菖蒲の顔を見た。夜の公園の静寂に似つかわない声が、空気を切り裂いていく。
言葉を発したところで、菜子はふと我に返る。
そもそも確証のないことだ。野生の勘頼りのそれは、明確なものではない。その証拠に、勢いで告げた言葉に、菖蒲に反応はない。
続かない言葉が、二人の間に静寂をもたらす。道路を走る自動車の音だけが時折聞こえてきて、既に数分経っている。
何も返ってこない言葉に、些か不安を覚える。……加えて、少しの逆上と。
「未蔓のことで無視されたんだと思ってたけど違った? もしかしてそれ全然関係なしに、私の性格がうざい? 言ってくれないとわからないよ。直せることなら直すし……」
半ば逆ギレとも言える口調で、菜子は菖蒲に不満と疑問をぶつけていた。閉ざした菖蒲の口の代わりに、言葉を重ねていた。口を開かず、俯いたままの菖蒲の顔を見ようとすると、大きな声が木霊した。
「……直せないわよっ!」
声を荒げた菖蒲に驚いて、胸がびくんと高鳴った。気持ち程度に揺らしていたブランコをぴたりと止めて、隣に足を向ける。菖蒲は変わらず下を向いており、少しだけ、カバンの上に置いた手が震えていた。
「なんで……、なんで菜子はそうなのよ! あんたといると、自分が醜く見える! そうやって、いい人ぶって誰にでもニコニコして! なんなの、なんなのよ……」