偽りのヒーロー

action.13




「菜子! これやるよ!」



 いきなり何を言い出すかと思えば、きらきら光った黄色い缶バッチ。意気揚々と、それを菜子に手渡した。



「へー。ナイトイエローのやつ? 実物、結構可愛いね」

「え! なんでわかんの!?」



 映画館にしか置いていない、限定の缶バッチ。戦隊ものの映画を見た人だけが、数回限定でまわせるガチャガチャの景品。

戦隊もののカラフルな色のスーツを身に纏ったものではなく、それらをモチーフにしたイメージ缶バッチ。

いわゆるわかる人にはわかる、というグッズなのだ。



「ミッツがコンプしたいっつーから一緒にやったんだけど、すげえかぶった! ほら見て、俺も持ってんの」



 レオが通学用のカバンとして背負っている、黒いリュックについた缶バッチを菜子に見せた。そこにはわかる人にしかわからない、デザイン性に富んだ缶バッチが並んでいる。

たくさん並ぶそれらが、明るいレオの性格とぴったり合っている。少し、絵面がうるさいような気もするが。



「ありがと」



 菜子は苦笑してそれを受け取った。目を輝かせて視線を向けて、今か今かとカバンにつけるのを待っているようだ。レオの期待に応えるように、大人しく菜子は自分のカバンに穴をあけた。



「何の話?」



 菖蒲が不思議そうに、「それなに?」と首を傾げている。口をパクパクさせるレオに肩をぶつけて、菜子は合図をしたつもりだった。

他にも何個か机に並べた缶バッチ。菖蒲にそれをあけたら、運よくお揃いのものを身につけられるかもしれないのに。


もたもたしているレオを見て、バカと心の中で呟いた。


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