偽りのヒーロー
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action.36





 菜子は大学3年生になった。

年齢にして、21歳。お酒も飲めるようになって、度々友人と飲み明かすこともある。





 いつのまにか小学校の高学年になって、一人で留守番のできるようになった楓。

少し皺が増えた父。それでも目立つのは笑いじわ。父は、とてもいい歳のとりかたをしているのだと思う。





 変わったことといえば、登録してない番号からよく電話がくるくらい。
知らない番号にはかけ直さないから、誰の電話番号かはわからないけれど、恐らく間違い電話なのだと思う。



 大学に入ってから、居酒屋のバイトも始めた。

花屋と違って、時間帯も客層も違う。二回だけ、系列店のヘルプに行ったときに、幸運なのか、不運なのか。連絡もしなければ、言葉を交わすこともなくなったレオを見てしまった。


幸い、ヘルプはホールじゃなくて、調理で入っていたから、その席に注文を取りに行くこともなかったし、料理を持っていくこともなかったけれど、きれいな女の人の、腰を抱えて帰って行った。

それも、二度、同じ人と来店していた。





 成人式の振袖は、母のために祖父母が買ったそれを着て出席した。


地元の、中学生までの友人たちと顔を合わせる機会に、大人びた同級生があまりにも輝いてみえた。早い子だと、妊娠してる子、もう既に小さな子どもがいる子。

少し見ないうちにガラッと変わった環境が、自分を置いてけぼりにするみたいで寂しくもあった。




 相変わらず、未蔓と菖蒲は仲が良い。それに加えて、同じ大学に進学した直っぴは、会う機会も増えた。そのたび菖蒲の話を聞かされて耳にタコができそうだけれど、微笑ましい。

大学になって一人暮らしを初めた直っぴとは違って、相変わらず私は実家暮らし。


お金を貯めたいのだから、それでいい。


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