偽りのヒーロー



「菜っ子、前期どうだった?」



 大学になると、授業形態が3学期制だった高校と違って、前期と後期になった。SとかAとかそんな一文字で優劣がつけられるくらいの世界になった。



「結構良かった。成績優良の中に入れたよ」

「そっかー。すごいじゃん。じゃあ、後期は決めた?」

「うん。行くことにするよ」



 成績優良者。今受けている奨学金のほかに、支援がいくらかがもらえるという制度。それに加えて、単位が通常の生徒に比べて、10単位ほど多くとることが可能になった。

クソがつくほど真面目だと言われた性格が功を奏して、必修とされる講義を残して、3年生の前期までにとれる授業は全部とった。

詰め込むだけ詰め込んで、レポートだって締め切りに遅れないように提出して。そしたら既に、必修の抗議と卒論を残して、卒業単位に十分足りる単位をとってしまっていた。

真面目、真面目だ。痛いほど。




 4年生になれば、教育学部は教育実習が行われる。

3年の春に、母校の中学校へ挨拶をしに行って、もう承諾を得ており、段取りとしては順調だ。

きっとその後は卒論に追われた日々が続くはず。さすればもう、この時期しか、時間はなくて。



「留学ってすごいよねえ。俺も論文の発表会見に行ったけど、英語さっぱりわかんなかった」

「テストと違うよね、きっと。まあ留学って言っても短期だし」



 くくっと肩を揺らしながら笑うのだけは変わっていない。意外につき合いの長い菜子と原田は、相も変わらず健全な友人関係を築いている。







 短期留学を進められたのは、2年と3年の狭間の時間だった。学生部、学生の相談の窓口みたいな場所があって、履修手続きや公欠の手続きをする場所。
成績表を受け取りに、学生証を提示したら、その場で引き止められたのだ。



「葉山さん、留学には行くの?」

「え? なんですか?」

「留学。留学の助成金の応募要項満たされてるよ。それに成績優良者になってるね。そうすれば、費用を押さえて外国行けるよ。こんな機会は今しかないよ。親御さんと相談してみなさい」



 そうやって、意外な誘いを聞いて相談してみれば、父は嬉しそうに行きなさいと勧めてくれた。



話を聞きに行ってみれば、自分の貯めたバイトのお金でも行けるくらいの金額。それもこれも、実家暮らしだからできることなのだけれど。


< 410 / 425 >

この作品をシェア

pagetop