お月見泥棒
「うわっぷ。折角のお団子が、枯れ葉まみれになっちゃう」

 喜助が言い、さっと三方を抱えると、女児が開けた扉の中に駆け込んだ。

「あ、待てよ」

 伸太もすぐに後を追う。
 融は慌てて、階の下に走った。

「ちょっと待ってよ。その祠、入っていいの?」

「非常事態だよ。お供え物が駄目になるよりいいだろ。何だよ、融。怖いのか?」

 ふふん、と馬鹿にしたように、伸太が振り返る。
 ぐ、と融は口籠った。

「中に何があるか、知らないわけじゃない。融も中を覗いたことあるだろ」

 村の子供はどこでだって遊ぶ。
 この祠だって、遊び場だった。

 中に入ったことはないが、扉や壁の破れから、中を覗いたことはある。
 特に変わったものがあるわけでもなく、普通に小さな祭壇があっただけだった。
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