お月見泥棒
月光
 灯りもなく暗い道を、女児は恐れるでもなく、てくてくと歩く。
 その後ろをついて行きながら、融は何度も振り返った。
 さっき一瞬嗅いだ臭いが、やたらと気になる。

「うわぁ、凄い!」

 前を行く伸太が声を上げた。
 たたた、と小走りになって、祠に駆けて行く。

「わぁ……」

 融も目を見開いた。
 真っ白なお団子が、三方に積まれている。

 この田舎では、真っ白い団子は珍しい。
 皆貧しいので、お供えといえば芋だ。

「凄いね。こんな綺麗なお団子、見たことない」

「お酒もある」

 はしゃぐ伸太と喜助が祠に近付く。
 女児が階を上がり、閉まっている扉に手をかけた。

「あ、ちょっと」

 融が止める間もなく、ぎぃ、と重い音を立てて、扉が開いた。
 ざ、と風が舞い、辺りの枯れ葉が舞い上がる。
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