オーロラの歌




吐く息が白く染まるほど、寒々しい地下。


階段を下りきると、長くて狭い一本道が待っていた。


暗くて前がよく見えない中、止めることなく足を進める。



屋敷の仕掛けはあんなに手の込んだ精密なものだったのに、隠し通路自体がコンクリートばかりの冷たいものだなんて、なんだか拍子抜けだ。



「ラジとシエルにこの隠し通路の場所を、メッセージでも残して伝えておけばよかったかな」


「あの二人なら、なんとかなるでしょー」



気楽そうなグリンの考え方に、ため息をこぼす。


まあ、二人は強いから、警備隊に捕まってはいないと思うけど。


さすがに隠し通路まではたどり着けなくて、正門で私達を待っているかもしれない。


……心配になってきちゃったな。



「やっぱり引き返して、屋敷の前で二人を待たない?」


「えぇ、いいの~?」



いいのって、何が?



「せっかく、灯りが見えてきたのにさあ」



グリンの声に導かれるように、ゆっくりと前を見据える。


隠し通路のゴール地点に、三つの灯火が熱く揺らめいていた。




「ねぇ、オーロラ。先へ行くよね?」




< 395 / 888 >

この作品をシェア

pagetop