オーロラの歌

きっと、残酷で切ないエピローグ





女王様の能力によって、凄まじい稲妻がもたらされた。


転生魔法を発動させて倒れた女王様は、狂ったように笑っていた。



あぁ、待って。


あと少し、なのに。


どうして。


またしても、何もできなかった。


運命を、変えられなかった。



ラジとグリンが泣きそうになりながら私の手を握ってくれているのに、私は握り返すことができなくて。


涙が輪郭のラインを沿って、私の手の甲の上にこぼれた。



「オーロラ、死ぬなよ。俺はまだ、お前のそばにいたい」



ラジは私の小さな手を両方の手のひらで不器用にくるんで、惜しむように悲嘆する。



「っ、オーロラ……!僕、オーロラともっともっと旅したいよ!僕をおいていかないで」



グリンの、涙で濡れたぐちゃぐちゃな表情が、前髪をヘアピンで留めているから、よく見えるよ。



勝手に一人で覚悟を決めちゃったことも。


その涙を拭えないことも。


怒らないで、許して。



「……ね、姉さん」



ポツリと聞こえてきた、ゼロさんの声。


転生魔法が、催眠魔法をも別の世界に飛ばして。


この世界では洗脳が若干弱まり、ゼロさんは本来の自分に戻りかけているのだ。


ゼロさんは漆黒の瞳で、離れ離れになるのを恐れながら、弱ってしまった私のことをただ静かに見つめていた。



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