純愛☆カルテット

Approach -SAFTY-

今年は初雪が遅く、11月に入ってもまだ雪の便りがとどかない。

それでも夜は空気がシンと冷える。

雪が積もらないと自転車に乗ることが出来るからありがたいけど。

部活の練習を終え、希和は駅に向かおうとマフラーを鼻先まで引っ張り上げて自転車にまたがった。

その時。

「磯井さんお疲れさま。」

後からの声だけで誰かがすぐにわかった。
心臓が一度だけ大きく脈打つ。

「あ、おつかれ冬生」

振り返ると、黒いウィンドブレーカーにオリーブ色のマフラーをぐるぐる巻きつけた染井冬生が立っていた。

「今日はこの後紅子と会うの?」

「ううん。なんか友達とご飯に行くみたい。」

「そっか、淋しいね。」

「まあ、帰りにうちに寄ってくれるらしいから我慢だわ」

希和のなぐさめに対し、冬生はそう言ってほほ笑んだ。

冬生の家は駅とは反対方向なので、途中まで一緒に帰ることは出来ない。

小さく息をつき、

「仲良さそうでなにより」

からかうような口調で返し、手を振って別れる。
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