新生児マス・スクリーニング―赤ちゃんの命を救う話を、ドクターから聞きました―


「そういう特殊ミルク、高いんですか?」



「いや、アメリカでは保険の対象に入っているから、特殊ミルクを始めとする医療用の食品は種類が多いし、さほど高くもないんです。30年くらい前から、今みたいなシステムでした。


そういう意味で、アメリカは医療先進国と呼ばれるわけですよ」



「日本はどうなんですか?」



「残念なことに、全然ですよ。日本では、医薬品じゃないと、保険が適用されないんです」



「ということは、特殊ミルクその他の医療用の食品は高くて、手に入りにくくて、そのぶん品数もたくさん作れない?」



「まさにそのとおりですね。日本とアメリカと、どっちの社会制度が進んでるとか遅れてるとか、そういう言い方は嫌いだし、したくないんだけど、医療用の食べ物飲み物に関しては、日本はもっと頑張らなきゃいけないと思います」



もちろん、日本でも代謝異常の赤ちゃんのための特殊ミルクは作られている。


この特殊ミルクは、必要とする赤ちゃんに無償で提供されてもいる。


大手の乳業会社が慈善事業として、特殊ミルクの提供をおこなっているからだ。



慈善事業は素晴らしいことだけど、危ういことでもある。


万が一、特殊ミルクの提供をする乳業会社が経営不振におちいってしまったら、慈善事業は真っ先に打ち切られる。


摂取する栄養の種類に気を付ければ健康を維持できる赤ちゃんたちが、生きていけなくなってしまう。


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