闇に咲く華


余計なお世話だと思っていると、男が屈託のない笑顔を見せた。


かわいい、というわけではないけれど、どこか人懐っこさを感じさせる顔には、万人受けするかっこよさがある。


そう思っていると、男が笑顔のまま言う。


「でも、その髪型は100点だ」


長かった髪を自分でバッサリ切った後、揃えるために美容室でショートにしてもらった。


男子ウケのあまりよくない、短い髪を褒められるとは思いもしなかった。


「俺、満島大牙。よろしくな、姫乃ちゃん」


躊躇いもなく差し出された手。


そこそこかっこいい男特有の、女慣れしているチャラい態度にどう返せばいいのかわからずにいると、隣に立つ担任が溜め息を吐いた。


「満島君、やめなさい。松井さん相手しなくていいから」


相手にしなくていいのは助かる。


私はこの手の男が一番嫌いだし、何より、誰かと親しくなる気などサラサラない。


「松井さんの席は、後ろの空いてる席ね」


そう教えられ、言われた通り教室の後ろへ行くと、空席が二つ並んでいた。

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