闇に咲く華


深く考えることなく、一番後ろの窓際の方に座ろうとすると……。


「こっちじゃねえ、そっちだ」


突然そう言ったのは、私が座ろうとした席のひとつ前の席に座る男。


どうやらこっちは、誰かの席だったらしい。


私を振り返っている黒髪の男は、髪を派手に染めている満島大牙と違い一見すると普通に見える。


けれど、シャツの袖から見えている腕には、黒い模様が描かれていて。


見た目は普通なのに、実はタトゥーを入れているとか、詐欺じゃない?


まあ、なかなかの美形なので、あまり普通って感じでもないんだけど。


目元がスッキリとした綺麗な顔は、どちらかと言えば取っつきにくそうにも見える。


どうせなら窓際がいいのにと思いながらも、仕方なくその隣の席に着くと男は黙って前を向いた。


今日から私は、新しい世界で生きる。


DEEP GOLD――通称『ゴールド』の〝姫〟と呼ばれた、過去の私はもうどこにもいないのだから。

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