初恋は鉄の味
現実と夢の境界

「お母さん!まさか朝帰りなんてびっくりしたよ。心配したんだからね?」
みくが帰ってきた朋子を駆け寄って出迎える。
ごめんごめんとカバンをおろしながら、朋子は謝る。
「別にいいけどさ、きっとよっぽど楽しかったんだね。」
え?ととぼける朋子に、顔に書いてあるよとみくが頬をいたずらめかしてつつく。
誰と再会したの?なにがあったの?と根掘り葉掘り尋問したがるみくを、みんな変わってなかったわよとあしらいながら朝食を作る朋子。
みくはダイエット中だからと朝ごはんを半分にして高校生のくせにメイクをし、朋子は食器を下げるとジャケットを選び直し玄関の鍵をかけ、聖一は妻と子どもにいってきますとハグをし、皆各々の当たり前な毎日が始まっていった。
仕事が休憩に入るとディスプレイに光る愛する人の名前。
【昨日はごめんな。】
【なんで謝るの?私、とっても幸せだったわ。】
【いや、驚かせるようなこと言ったりしたり、自分を抑えられなくて。今度よかったら、また改めて食事でも行けないかな。】
【それはお互い様でしょ。ごはん、ぜひ行きましょう。よかったら我が家に食べに来ない?狭いし娘もいるけど。】
【朋ちゃんの手料理かぁ、嬉しいなぁ。迷惑じゃなければお言葉に甘えて。】
そんなチャットのやりとりを繰り返し、数日後、聖一は朋子の家へと足を運んだ。
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