身代わり・・だけ・・

…壊れた


本当に、女の子が
それも年頃の女の子がいた部屋か
と、思うぐらい
殺風景な部屋だった。

ここで、栞奈は
どんな思いで生きてきたんだ。

妻は、座り込んで頭を垂れていた。

私は、栞奈の仕事の話を
妻にした。

栞奈の商売の管理は、
母がしてることも。

妻は、あ然と。

ガタッと、音がして
振り向くと
杏奈が、立っていて

「えっ、栞奈は?
栞奈は、どうしたの?」
と、杏奈。

私は、
「栞奈は、いない。
もう、ここに
帰ってくることはないだろう。」
と、言うと
「何が、あったの?」
と、杏奈が訊ねたから

私は、母親から聞いたことを
全てを話した。

私達、夫婦について
杏奈の彼氏だった臣君について


そして、妻に
「お前が杏奈の為に
蓄えてるだろうから
私の資産は栞奈に渡す用に言われた。
と、言うか
栞奈の管理をしている
母親に渡す」
と、伝えると


杏奈は、
『自分が栞奈に
当て付けるために
栞奈がずっと想いを寄せていた
臣君とつき合い
気持ちもなかったから
パリに行くときに別れた。

パリの恋人と別れた事が
辛くて悩みを聞いてもらう日々が、
この所続いていた。』

と、父と母に話した。

杏奈は、父親に生まれて
初めて叩かれ
母は泣き崩れた。

その夜、臣も
家に呼ばれて
今までの事を訊かれた。

臣は、杏奈との事
栞奈との事を全てを話して
父である幹久に殴られた。

臣は、
『杏奈を失い
失望した日々を栞奈に
救ってもらって
栞奈と一緒に過ごしている間に
栞奈を愛するようになり
栞奈と一緒にいたいと
思うようになっていた。』
と、話し
『杏奈の悩みが落ち着いたら
栞奈に気持ちを伝える
つもりでいた。』
と、続けた。

だが父は、
「もう、遅い。
栞奈は、私達家族に対して
信頼も愛情も全てを失い。

愛した人には、
身代わりにしかされてなくて
心が、壊れてしまったんだ。

私の母が、そんな栞奈を
連れ出してくれたんだ。

居場所も連絡先も
教えては貰えなかったよ。
親としても、妹としても
私らは失格だ。」
と、言った。

杏奈・・も、
由布子・・も、
臣・・も、

誰ひとりとして言葉を発することなく
部屋を出て行った。
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