身代わり・・だけ・・

…由布子


夫が、珍しく早く帰って来て
「ちょっと、来てくれ。」
と、呼ばれた。
「どうしたの?早かったのね。」
「ああ、まあな。
   栞奈は、どうしてる?」
「えっ?栞奈ですか?
良くわかりませんが、部屋では?」
「やはり。
お前、栞奈にいつあった?
その時、何を話した?」
「えっ、どうされたのですか?
杏奈とは、昨夜も話したのですが
栞奈とは?あら?
栞奈の姿をいつみたかわかりません。

でも、あの子は家が好きですし
一人でいても問題ありませんよ。」
と、答えた。

すると
「なぜ、そんなことが
わかるんだ?
なぜ、お前は杏奈だけしか見てないんだ。
私が、言える事ではないが
栞奈が、どんな気持ちで
生きてきたか、知ってるのか?
今、どこにいて
どうしているのか
知っているのか?」
「えっ、あなた、どうなさったの?
栞奈は、私がいなくても
心配ないけど、
杏奈は、忙しい子ですから
私が、付いていないと。」
「だから、なぜ、栞奈は、
お前がいなくても
大丈夫だと、わかるんだ?」
「ええっと、小さいときから
そうだから。」
「小さいときから・・
やはりな。
栞奈は、今、俺の母が連れてる。

まもなく、日本を出るそうだ。

俺は、お前に家の事も
家族の事も任せたままでいた。
子供達とも会話もなかった
母さんからも叱られたよ。

我が子の事もきちんと、
できてなくて、
何がクライアントだと。

母さんに
栞奈に会わせて欲しいと
頼んだが、
栞奈から断られたよ。

私と話したい?
私じゃなくて、杏奈とでしょ?
両親は私と会話すらしない
私からも話す事もありません。
と、答えたそうだよ。」
と、言われて
「えっ?お義母さんと?
日本を出る?
生活は?どう言うこと?」
「それに、20数年も
この家で、育ったのに
栞奈の荷物は・・
箱二個あるかないかだったと。」

由布子は、直ぐに栞奈の部屋に
行ってみた。

栞奈の部屋は
空っぽと言うか
私達が、買ってあげた
ベッド、タンス、勉強机だけ
後は、何もなく殺風景な部屋だった。

杏奈の部屋とは大違いだ。
杏奈の部屋は、女の子の部屋といった
感じに飾られていて
物も溢れていた。

荷物が・・箱。。。
・・たった······ふたつ‥‥‥。

私は、何を見てきたのか?

うなだれていると
 夫が、入って来て
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