白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
 2日間の休みはあっと言う間に終わり、また沙織は実習に戻った。
 
 後半の実習は沙織が担当教師と変わり授業を行わなけば行けなかった。

 その授業の前準備として沙織自身も下調べをしたり、レポートをまとめたりで、ほとんど僕の所に来る暇もなかった。

 来るメッセージも「ごめん、今日の分まとめないといけないから」「疲れたよう」「お休み」とか短くなっていった。

 多分、これが現実なんだよな。と自分でも解っていると気持ちを押し込んで「解った。ゆっくり休め」「がんばれ」そして「お休み」とだけ送った。

 そんな時、部長の有田優子から電話が来た。

 その日昼で講義を終え、学食で飯でも食べようと思っていた時だった。僕のスマホが鳴った。


 「助けて」とかすれた声で一言。


 「どうしたんですか、部長、部長……」電話は途切れた。

 急いで文芸部に行き、「極秘部外持ち出し禁止」と書かれたファイルを許可なく開き、有田優子の住所を調べた。それをメモ取って急いで大学を後にした。

 部長の住所、それを改めて見るとその住所はこの街ではなく、少し離れた郊外の町だった。

 電車を乗り継ぎようやくたどり着いた駅から歩いて10分ほどにある高級マンション。その5階にある部屋が彼女の住まいだった。
    
 彼女の部屋の高級感あるドア。インターフォンを押す。少し待つが何も応答がない再び押す。されど返事もなくそのドアは閉ざされたままだった。3回目押そうとした時、オートロックが解除された音がする。扉は開かなかった。

 恐る恐るドアを開け「済みません」と声をかけるも返す返事はない。見上げ廊下の先に壁の端から人の足が見える。僕はとっさに上がり込んでその方へ廊下を走り駆け込んだ。そこには


 そこにはインターフォンのパネルの下で倒れ込んた有田優子の姿があった。


 「部長」とっさに声を出した。そして彼女の体に触れた。物凄い熱が僕の手に伝わった。

 僕はあたりを見回し寝室を探した。まずは彼女を寝かすために。

 一つのドアを開ける。するとそこは彼女の仕事部屋兼寝室だった。すぐさま彼女を抱き抱えた。

 彼女の体は思いのほか軽かった。その肩から延びる華奢な腕、そしてスタイルがよさそうに見える細い体。すべてが軽くそして今にでも壊れてしまいそうなそんな体だった。
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