白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
 寝室に入ると散らかっていた。ごみに服、そして彼女の下着、それらが部屋中に散乱していた。でもそんなことにかまってはいられなかった。

いったん彼女をベットに寝かせ、ベットの上にあるスエットや下着を寄せ彼女に毛布を掛け寝かせ付けた。

 そしてキッチンに向かい、冷凍庫を開ける。中に凍り枕があるのを見つけ、脱衣所からタオルを取それに巻いた。洗わずに残された食器、ごみ袋にまとめられた沢山の弁当の殻。それらが彼女の生活を現していた。

 グラスに氷を入れミネラルウォーターを注ぎ、シンクで食器を寄せながらタオルを濡らした。

 彼女の所に行くとその体は汗でびっしょりだった。うなされながら荒い息をしてとても動ける状態ではなかった。

 脱衣所から残りのタオルを濡らし干してあったバスタオルを持って寝室へ戻る。

 そして彼女の着ている服を脱がし、下着をそっと取り払う。

 何も着けない彼女の肌が露わになった。少し痩せ気味のされど綺麗なその体が僕の目の前にいた。

 濡れたタオルで体を拭く、彼女のすべてのところを。バスタオルを下に敷いて近くにあるタンスを開ける。下着を探し出しそっと履かせ、近くに寄せて置いたスエットを彼女に着させた。

ブラは付けなかった。凍り枕を頭にやり濡らしておいたタオルを額にあてた。

 そして音を立てない様にとりあえずごみと散らかっていた衣類をまとめ寝室を出た。

 スマホで検索して往診できる病院へかたっぱしに電話を掛け、1時間後、近くの個人医院から医者と看護婦がやってきた。

 診察をして注射を一本してから、もう少しで肺炎になるところだったと言われた。2種類の薬と落ち着いたら病院に来るようにと付け加え、医者と看護婦は帰って行った。

 彼女のところに戻るとまだ熱は高そうだった。少ししたら薬をやるようにと言われた薬は座薬だった。

 躊躇ったが、薬を取り出した。そして下着を下げ横向きにして、座薬を彼女に押し込んだ。「う、う」と漏らす声がする。寝室を出たときには、僕の方が汗だくでぐったりとしてしまった。

 今日はバイトがある。今から動かないとここからでは間に合わない。しかし彼女を放ってはおけなかった。

 電話をした。出たのは恵梨佳さん、急用が出来ていけない事を伝える。珍しいねと返され了解してもらった。
< 76 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop