雪の降る日に、願いを消して
聡樹は白いTシャツにジーンズ姿だ。


手にはコンビニの袋を下げている。


「これ、お見舞い」


そう言って袋を渡される。


中にはカットフルーツが入っていた。


「わざわざいいのに」


「なに言ってんだよ。自分の彼女が風邪ひいてるのに手ぶらで来るわけにはいかないだろ? って、そんな高価なフルーツでもないけどさ」


聡樹はなんだかとても嬉しそうにそう言った。


一方あたしは、渡されたカットフルーツの蓋を開けながら『彼女』という単語にひどく違和感を覚えていた。


そうだ。


あたしは昨日から聡樹の彼女になったんだ。


聡樹はあたしの彼氏。


そう望んで、そうなった。


だけど胸の中の違和感はぬぐえない。


なんだろう、モヤモヤした気持ちになってしまう。


そう思った時、駿からのメッセージを思い出した。


何の変哲もない、面白くもないメッセージ。


あんなものが送られてきたから、あたしの心はまた揺れ動いているのかもしれない。
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