雪の降る日に、願いを消して
デート
風邪が完治したのはそれから2日後だった。


最初の日に微熱まで下がったものの、夜になるとまた高熱が出て、翌日観念して病院に連れて行ってもらった。


さすがに病院で処方される薬はよく効くもので、それを飲んだら風邪は嘘のように治ってしまった。


元気になったあたしを見て土曜日のデートに誘って来たのは聡樹の方からだった。


学校の帰り道、少し頬を赤らめて『一緒に出掛けよう』と誘ってくれた聡樹。


幼馴染の聡樹とはよく2人で出かけたこともあったけれど、その照れ方を見ればデートに誘っているのだとすぐにわかった。


いつもと少しだけ違うお出かけ。


あたしはぼんやりとクローゼットの前に立っていた。


どんな服を着ていこうかと思っているのだけれど、聡樹の前でどんな服を着ればいいのかわからなくなってしまったのだ。


今まではどんな服だろうと気にしなかったのに、デートとなると妙に意識してしまう。


オシャレなワンピース?


それともカジュアルなパンツだろうか?


どれを選んでみても、なんだかピンとこない。


思えばあたしはデートの経験なんてなかった。


小学校のときに好きな男の子に誘われて夏の縁日に行ったくらいだ。


クローゼットの前で途方に暮れていると、スマホが鳴った。


確認してみると聡樹からで、約束の20分前になっていることに気が付いた。


「なんでもいいか」


焦ったあたしはそう呟き、適当な服を手にとって着替え始めたのだった。
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