雪の降る日に、願いを消して
秘密
２人で教室へ戻ると、ショウと視線がぶつかった。


ショウがあたしを見て軽くウインクをしてくる。


その態度に胸の奥が熱くなるのを感じた。


「鈴は大丈夫なの？」


もうすっかり泣き止んだ紗英がそう聞いて来たので「え？」と、聞き返した。


「あたしよりも、鈴の方がずっと大変でしょ？」


「そう……だけど……」


突然現実に引き戻された気分になり、あたしは席に座って俯いてしまった。


鈴の言う通りあたしの好きと言う気持ちには沢山の障害が待ち受けている。


普通の片想いとは全然違うんだ。


「でも、なんとかなる気がする」


あたしはそう言い、顔を上げて笑った。


ただ『気がする』だけだけど、本当にそう思っていた。


今日のショウはあたし自身を気にしてくれているし、教室へ戻った時にウインクまでしてくれた。


すでに振られているのだから思い違いをするのはよくないけれど、それだけで心の中は熱っぽくなるのだ。


窓の外は絶え間なく雨が降っている。


灰色の世界に包まれた校舎の中、雨の音があたしたちを優しく包み込んでいた。
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