雪の降る日に、願いを消して
ショウがイライラとした口調でそう言って来た。


「ご、ごめん……でも、ホッとしちゃって……」


そう言うと、ショウは怪訝そうな顔を向けて来る。


好きな人を怒らせておいてホッとしたなんて、変な女だと思われたに違いない。


「意味わかんねぇ」


ショウはそう言い、あたしから視線を逸らせた。


「なぁ、お前はショウなんだよな?」


聡樹がまたその話題に触れた。


ショウは大きなため息を吐き出した。


観念しない事には解放されないと思ったのか「お前ら、ほんと性格悪いよな」と、舌打ちまでされた。


「お前が隠していることを誰かにバラしたりはしない。そんな事をするためにここにいるわけじゃないんだ」


聡樹が言う。


「それならどうしてそこまでして俺に構うんだよ」


ショウが聞く。


「鈴がお前の事を好きになったからだ」


聡樹がよどみなくそう答えた。


「いくら好きになられても、俺は誰の気持ちにも答えることはできない」


キッパリと言い切ったショウ。


その瞬間、違和感が胸を付いた。


『誰の気持ちにも答えることはできない』


それは自分の意思とは関係なく、そうせざるを得ないという意味に聞こえて来る。


「お前が鈴を振っても、駿は桜子と付き合ってるじゃないか。同一人物を演じてるくせにおかしいだろ」


聡樹がショウへ向けてそう言った。


確かに、そこにも矛盾が生じている。


同一人物を演じる必要があるのなら、2人とも誰とも付き合わないと決めておくべきだ。


「はぁ? 何言ってんだよお前ら。駿だって誰とも付き合ってないだろ」


ショウは怪訝そうな顔で、そう言ったのだった……。
< 211 / 312 >

この作品をシェア

pagetop