雪の降る日に、願いを消して
クラス表
なきじゃくる萌ちゃんをどうにか家に送り届けたあたしは、クタクタになって家に戻ってきた。


あたりはすっかり暗くなっていて、お腹もペコペコだ。


ずっとファミレスにいたのにウーロン茶1杯しか飲めなかった。


萌ちゃんを責めているわけではないけれど、せめて号泣の理由くらいちゃんと知りたかった。


あれからも萌ちゃんは意味の分からない事を連呼して、時々『駿兄ちゃん』とか『カレンさん』と言った人名を口にする程度だった。


「カレンって誰よ……」


ブツブツと文句を言いながら制服を脱ぎ捨てる。


駿とショウの事が少し見えた気になっていたけれど、また謎が増えてしまった。


あたしはいつまでも2人の事を知らないままなのかもしれない。


これ以上踏み込まないほうがいいと思っていたけれど、今日の出来事でその意思も変わってしまった。


萌ちゃんがわざわざあたしに会いに来て、そして意味不明の言葉と人名を聞かせて帰ったのだ。


萌ちゃんにとってあたしは敵であり、できるだけ避けていたい相手のはずだ。


そんな相手に泣きじゃくる顔まで見せて来たのだ。


萌ちゃんの中から『SOS』を感じ取るのは当然の事だった。


萌ちゃんはあたしに助けを求めている。


それを無視できるほど、あたしは非情な人間ではない……。
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