雪の降る日に、願いを消して
約束
あたしたちはできるだけ丁寧に、今までの経緯を説明した。


前田先輩はパスタを注文し、それを口に運びながら全部を聞いてくれた。


「駿を尾行するなんて、すごい執念だな」


前田先輩に呆れたようにそう言われたので、あたしは俯いてしまった。


たしかに、あれはやり過ぎだった。


今思い出してみればただのストーカー行為だったかもしれない。


「ごめんなさい……」


「でもまぁ、だいたいの所はわかった。君たちは駿とショウの存在を知ってしまった。そして『カレン』の事も」


そう言い、前田先輩は口元をふいた。


「前田先輩は、『カレン』って女の子のことを知ってるんですか?」


あたしがそう聞くと、前田先輩は大きく頷いた。


「もちろんだよ」


知っていて当然、という様子だ。


「カレン……漢字では愛しい存在という意味の可憐なんだけど、可憐は俺や岩中兄弟にとって幼馴染なんだ」


「幼馴染……」


あたしはそう呟いた。


「そう。あいつらと可憐は同い年だったんだけど、可憐は小学校へ通っている途中で引っ越しをしてしまったんだ」


「そうなんですか?」


「あぁ。駿の方が可憐と何か約束をしていたらしいんだけど、引っ越したことでそれもうやむやになってしまった」


前田先輩はそこまで話すと水を飲んだ。


「その可憐さんは、今どこにいるんですか?」


あたしはそう聞いた。


可憐さんに会えばきっとなにかがわかるはずだった。


しかし、前田先輩は左右に首を振り「わからないんだ」と、言ったのだった。
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