雪の降る日に、願いを消して
「期末テストが終わるころには気温が戻るって言ってたぞ」


聡樹がそう言った。


その息は白くなって消えて行く。


「地球の気候はどんどんおかしくなってるよね」


紗英が言う。


「そういえば昔真夏に雪が降った国もあったよね」


あたしたちはそんな会話をしながら学校へ向かう。


できるだけ普通に。


できるだけ昨日までと同じような日常を繰り返そうと意識しているのが、自分でもわかった。


考えるべきことは色々あるはずなのに、なにをどうすればいいのかわからない。


駿もショウも、自分の人生を受け入れてしまっているから、なおさらだった。


「あれ、お前ら」


学校の校門まで来たとき、前田先輩が声をかけて来た。


「先輩、おはようございます」


一応、丁寧に頭を下げておく。


前田先輩が図書室で声をかけてくれなければ、全貌は見えていなかったのだ。


「おはよう。可憐について、わかったか?」


そう聞かれて、あたしは押し黙ってしまった。


前田先輩は本当の事を知っていたのだろうか?


知っていても、言ってはいけないと思って黙っていた可能性はある。
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