雪の降る日に、願いを消して
「……はい」


「そっか……全部、か?」


そう聞かれて、あたしは聡樹と紗英を見た。


どう返事をすればいいのだろうか。


正直に、聞いた話をしてもいいだろうか。


もし前田先輩が何も知らないのであれば、余計な混乱を招くことになる。


「大丈夫だよ、俺、あの双子からは色々相談を受けてるんだ。もちろん、可憐の事も。それで、1つ、考えてた事があるんだ」


「考え……ですか?」


前田先輩を見ると、ひどくソワソワして周囲を気にしている。


人前では言えないような事なのかもしれない。


そう察したあたしたちは、校舎の裏へと移動した。


ここなら人はほとんど来ない。


年中日陰のこの場所に経つと、肌を刺すような寒さに襲われた。


「君たちがどこまで知ったのはわからないけど、聞いてくれるか?」


「もちろんです」


あたしは大きく頷いた。


前田先輩は駿やショウのために何かを考えてくれているのだから、それを断る気は最初からない。


「俺の叔父さん……父親の兄なんだけど、前田幸次郎なんだ」


前田幸次郎。


その名前には聞き覚えがあった。


何度もテレビで聞いたことがある、敏腕警部だ。


ドラマなどの話ではない、現実の警部でニュース番組などで見かけることがある。


「え……?」


あたしは驚いて目を見開き、キョトンとしてしまった。
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