雪の降る日に、願いを消して
「俺の気持ち、気づいてんだろ?」


そう聞かれて、あたしはビクリと体を震わせた。


そろりと顔を上げてみる。


聡樹は真面目くさった顔であたしを見ている。


ここはきっと、あたしが何かを言う番なんだろう。


『嬉しい』とか『ありがとう』とか。


もしくは『ごめんなさい』……とか。


頭では理解しているつもりなのに、言葉は喉に張り付いて出て来なかった。


それは自分の返事が聡樹を傷つけるものだと知っているからかもしれない。


なにも言わないあたしをジッと見つめている聡樹。


その目はサッカーボールを追いかけている時と同じで、好きなものへ向ける目だった。


あたしはそんな目を見つめていることができずに、すぐに視線を逸らせてしまった。


と、同時に聞こえて来たため息。


落胆するような、呆れるようなそんな雰囲気が漂ってくる。


「やっぱり、俺じゃダメ?」


『やっぱり』という言葉が胸に重たくのしかかる。


聡樹じゃダメだなんて思った事はない。


だけど、聡樹と付き合いたいと思った事もない。


聡樹と付き合うという事を考えたことがないから、『ダメ』だという気持ちになったこともないのだ。
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