雪の降る日に、願いを消して
強がり
駿の事を諦めて聡樹と付き合うことができたら?


自分の部屋、ベッドの上に寝転んであたしはそう考えた。


聡樹はきっとあたしの事を大切にしてくれる。


今までずっと一緒にいた幼馴染だし、お互いの事もよく知っている。


あたしと聡樹が付き合えば、きっと両親たちだって喜んでくれるだろう。


幼い頃、両親がそういう会話をしていたことを覚えていた。


あたしは寝返りをうって息を吐き出した。


両親が帰って来る前に洗濯物くらい取り込んでおいてあげたいけれど、今日はそんな気分にもなれなかった。


聡樹の勇気を出した時の表情を思い出すと、不意に目の奥が熱くなり、鼻の奥がツンッと刺激された。


そしてすぐに視界が歪み、熱い涙が込み上げて来る。


聡樹はあたしに振られることをわかっていた。


わかっていたのに、想いを伝えようとしてくれたんだ。


その勇気はあたしにはないもので、その勇気に対して『ごめんなさい』と返事をするしかできない自分に腹が立った。
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