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1.デリートしましょう。

目覚めたら知らないおうちだった。

「……いやん……携帯小説みたい……」

思わず口からこぼれたのは、自分のキャラクターらしくない「いやん」なんて単語。
27年間生きてきたけど今まで一度も口にしたことはない。
そんな言葉が思わず漏れるくらい、西條 菜々羽(さいじょう ななは)は驚いている。
天井の照明は一番小さいあかり。
部屋がうす暗いのは時間のせいじゃなく、遮光カーテンのせいだろう。


隣に誰かいる……。
でも怖くて確認できない。

動けない……。

固まって動けない。



見つめるのは目が覚めた時に目に飛び込んできた天井の照明。
気配で隣に誰かるのはわかってるけれど、菜々羽は天井の照明を見続けていた。

「んー……」

ひゃうっ!

隣の誰かの声に菜々羽は総毛だった。全身の鱗が逆立ったみたい。
身体を動かさないで目だけを動かして誰かを確かめようかと思う。

でも……。

目覚めたときからぼんやりと昨日の記憶が断片的によみがえる。
昨日……飲んだ。
後輩の浅葉くんと二人だった。
相談があるとかなんとかって言ってて……。

2,3日前からだるくって昨日本当にだるくって、風邪薬を飲んだ。
それをすっかり忘れてた。

すっかり忘れて……いつもの量アルコール飲んだら、そこから記憶が曖昧。
薬とアルコール。
その相乗効果でいつもより酔いが回ったみたいだ。

げー……。


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