フォーチュン
寸でのところで目の前にいたアナスタシアを抱き留めたユーリスは、近くにあったベッドへアナスタシアを運び、そのまま寝かせた。

・・・やはりこの温もりは、アンではない。
何という失態をしてしまったんだ、俺は!
『恋は盲目。見た目で判断をしてはいけない』という生命の木の「助言」が、今頃我が身に沁みてくる。

そしてユーリス自身は知らないが、「独り先走る状態は、お互いの誤解を招く」と言った占術師(せんじゅつし)・愚者(フール)の言葉(メッセージ)が、ここで現実味を帯びてきた。

アナスタシア宛に贈った花を、アンジェリークはどんな思いで見ていたのだろう。
いや、アンジェリークは、「コンラッド」と名乗った俺の本名はもちろん、本当の身分もまだ知らないはずだが・・・。

「アナッ!」
「皇女にこのような思いをさせてしまい、申し訳ない」
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