フォーチュン
「皇女は自らの身分を捨てる覚悟で国を出た。ということは、身分証を持ってはいないはずだ」
「皇女は王族専用の身分証しか持っていないはず。であれば、仮身分証を持っていても使わないだろう。使えば居所がすぐバレる」
「あの子は・・アンジェリークは、身分証を持って行ってはいません」と言ったヴィヴィアーヌに、「やはりそうか」とユーリスがつぶやいた。

「どちらにしても、荷馬車の荷物の中にでも隠れていれば、国外を出ることは容易いでしょう」
「・・・そうだな」とユーリスはつぶやくと、フゥとため息をついた。

イコール、身分証を持ってはいなくても、他国へ入国するのは容易な事だというのをユーリスが言わなくても、全員分かっている。

「バルドー国は、南東部以外は陸続きとなっている」
「南東部は港だ。そこから貨物船に乗った可能性だってあるぞ」
「国境が陸続きになっている隣国へは、隠密裏に使いを出しております。ですが、これは公にはしておりませんので・・・」
「人員も割けず、他国へも知られてはならず、だな」

ヴィヴィアーヌは、「そのとおりでございます」という返事を言う代わりに、かすかにうなずいて肯定をした。
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