フォーチュン
「し、しかし一体いつ、どこで・・・」とつぶやくように問いかけたアントーノフの声を、ユーリスは完全に無視する。

だよなー。
宴放棄して街に繰り出したとき皇女に出会った、なんて言えないよなぁ。

と、コンラッド以外の護衛3名は、口には出さなかったが、心の中で密かに思った。

「とにかく俺たちは出会った。話をし、楽しい時をともに過ごした。アンは本当の俺のことを知らない。だがまた会えば必ず分かる。そのときは二度と手離しはしない。だから」とユーリスは言いながら、しわくちゃにした書置きを丁寧に伸ばしていた。

その手つきはとても優しい。
しかしそれとは裏腹に、ヴィヴィアーヌとアントーノフを容赦なく睨みつけるユーリスの目つきに恐れをなした二人は、思わず身を縮ませた。

「アンジェリークを他国へ嫁がせようなどという浅はかな考えを持つことすら、俺が許さん」
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